Innovation for Ecology ![]() |
これまで、純正オーディオシステムによる音質改善を行ってきました。 ■ 第一段階は、「サウンドシャキット」を付け、豊かな低音、広がりや奥行きのある音になりました。 ■ 第二段は、ツィータのコンデンサを素性の良い物に替え、高音域が一段と透明感を増しました。 ここでは最終段階として、スピーカが本来持っている性能を最大限に引き出すため、スピーカが入っているドアのデッドニングを行います。 |
難易度 | ★★★☆☆ |
作業時間 | 5〜6時間 |
費用 | 15,000円前後 |
「サウンドシャキット」を付けて音質が向上すると、もっと良い音にしたいと言う欲求が出てきます。 純正スピーカや純正アンプを変えてしまおうと思う前に、ドアのビビリやブーミーな低音を改善すれば、低価格でありながら格段の音質改善ができます。 ここでは「お金を掛けない」というポリシーで、 @安価で、A何処でも入手でき、B性能の高い材料 を使い、誰が行っても「かなりの効果が得られる」デッドニングをご案内します。 さて、デッドニングとは何でしょうか? 「ドアに付けたスピーカを効率良く鳴らし、スピーカが本来持っている性能を十二分に発揮させるための技法」 とでも定義しましょうか。 デッドニングをしないと、スピーカのコーンが前後に動くことで発生する振動や圧力で、ドアや内張りが振動します。 また、スピーカが存在するドア内部は、走行中のロードノイズ、エンジン音、振動、種々雑多のノイズが入り交じり、これらの影響で音が濁ったり割れたり、ビビリ音が出たりします。 その対策として、ドアや内張りの制振、不要な音の吸音、外部ノイズの遮断、ドア部のスピーカボックス化が上げられます。 |
デッドニングを行うには、材料の選定が最も重要です。 今回は初めからHPに載せるために、安くても入手に時間が掛かったり困難な材料、地域性や特殊な材料は避け、全国何処でも入手可能なもの、を前提に選択しました。 材料は音響専門メーカは勿論、最近ではカーショップブランドでも販売するようになりましたが、選択肢が多くなるにつれ、何を使ったら良いか迷うところです。 何種類かのデッドニング材料をキットにしたものや、材料ごとのバラ売りまであり、値段の幅も大きく、一層迷いが深まります。 「高い物はいい材質を使っているから、音が良くなるよ」とは、あるカーオーディオショップの店長の言葉です。 でも、素人の耳に「材料の善し悪しの音」を聞き分けられるか、疑問でした。 また、「材料の量」も問題です。 初めてデッドニングする場合、雑誌記事などを参考にして作業の流れを理解しますが、そこには「材料の量」は書いてありません。 記事は不特定多数相手ですから、特定の車種に限った量を明示できないからです。 私も、カーショップに行って、材質よりも枚数を気にしながら探していた経緯があり、最後まで決断できませんでした。 今回使ったのは、当HPにもリンク照会されている 「北斗パッキン株式会社 防音素材販売事業部」 が販売している「カ−オ−ディオ用デッドニング素材 SPDシリ−ズ」。 これはデッドニング専用として販売されているものです。 ■制振材 ドアの振動防止に軽量アルミ材を使い、裏面はブチルゴム粘着材塗布。 また、剥しやすい粘着材塗布のアルミ材もあり。 ■吸音材 不要音の吸収に一般的なウレタン材を使い、裏面は粘着材塗布。 また、「腐りにくく異臭が無い」新素材のウレタン材もあり。 素材の補足説明 ■制振材 ブチルゴム系の粘着材でデッドニング材を貼ってしまうと、後で剥す場合、非常に剥し難いものです。 今回はサービスホール周りのデッドニングにブチル粘着ゴムを使わない新素材を使っていて、『必要時は簡単に剥せる』方法を採りました。 この材料が振動対策に良く、「普段は剥がれ難いが、人の力で剥がれる」なら、正にデッドニング材としてエコ材料であり画期的なことです。 ■吸音材 ドア内部に貼ったウレタンの吸音材は、駐車場の条件によっては雨水を含んで異臭を発することがあります。 今回は新たに開発された『異臭を出さないウレタン材』を使った点もポイントです。 |
■ 振動防止用に、ブチルゴム付きアルミ制振材を8枚。 ■ 同、新アルミ制振材を3枚。(40cm×50cm) ■ 同、樹脂制振材を3枚(アルミ制振材でも可)。 ■ 吸音材として、新ウレタン材を4枚。 (寸法は指定が無ければ 50cm×50cm ) アルミ材と言ってもブチルゴムが着くとしっかりしている上に重量もあります。 ウレタン材以外は、縁に粘着材の無い部分が1cmほどあり、その分をカットして使います。 上記の枚数で下記の寸法の物が取れない場合、端材を寄せ合わせて使用します。 また、お徳用パックもあるようなので、メーカに問い合わせてください。 |
初めにドアの名称を覚えてください。 ドアはその内部に窓ガラスを収めるため、上部が開いた袋状になっています。 その外側(車外)を「アウターパネル」、 内側を「インナーパネル」と呼びます。 インナーパネルには装飾と衝撃吸収用の内張りがありますが、エスハイの場合、内張りは1つです。 |
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(デッドニングは運転席、助手席で行うので、下記の2倍必要です) 今回はアウターパネル、インナーパネル面積のほぼ8割以上のデッドニングを行いました。 これが正解ではありませんので、皆さんの都合でカットして良いでしょう。 (予めカットしておくと効率良い作業ができます) |
![]() ![]() その上にサイドインパクトビームが隠れるようにウレタン吸音材を貼りますが、多すぎると「音が硬くなる」ので調整が必要です。 最近流行のカーボンハットを付ける場合、ウレタン材の上にカーボンハットを貼るとガラスと干渉するので、この場合はウレタン材でサイドインパクトビームを覆わないでください。(ウレタン材は、サイドインパクトビームの上下で分けます) 上記の寸法でアウターパネル下部の「水はけ部分」を避けて貼ることができます。 ![]() ![]() サービスホール周りは「新素材アルミ」を貼りますが、このアルミ板だけでは「軟い」為、その上を覆うように制振材を貼ります。 貼る制振材はブチル着き樹脂材でも一般のブチル着きアルミ材でも構いませんので、価格の安い方に決めましょう。 (樹脂材、アルミ材の両方をテストした結果、遜色ないようです) なお、ウレタン材以外は、縁に粘着材の無い部分があり、その部分をカットするため、使用できる寸法が少し減ります。 これだけの量を貼ると、デッドニング効果でドア内部の音圧が高くなるため、効率の悪い純正スピーカには向いているでしょう。 しかし、流行の サウンドシャキット+ウインダムスピーカ では効率が高まる為、ドア内部の音圧が上がり、その結果、予期せぬ「ビビリ」が発生したり、低音域だけがアンバランスに持ち上がる傾向があります。 この対策として、全てのサービスホールを塞がず「何処かを開けて」音圧を逃がすことも一つの手法で、「デッドニング=完全密封」しか頭に無いと絶対に出てこない解決策です。 |
この手法は他の記事にありますから、そちらを参照して外してください。 また、インナーパネル、アウターパネルに油汚れが付着しているとデッドニング材が定着しないので、おなじみのインテリアクリーナ等で汚れを落としておきます。 |
用意したデッドニング材 1:裏側にブチルゴムが着いているアルミ材 2:裏側が粘着材だけの新素材 3:樹脂系のデッドニング材 4:新ウレタン吸音材 これらを上記の寸法にカットしておきます。 |
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@:300×500のアルミ制振材をサービスホールから入れ、サイドインパクトビームの下側から貼り付けます。 A:200×500のアルミ制振材をサービスホールから入れ、サイドインパクトビームの上側に貼り付けます。 次にAの上部に250×500のアルミ制振材を同様に貼ります。 |
このとき、裏の保護紙の上側(又は下側)を一部だけ剥し、アルミ材の位置を合わせたらアルミ材を貼り、保護紙を次第に剥しながら貼っていくと上手く着きます。 材料をしっかり定着させる為、ローラーなどを押さえつけるように転がすと密着します。 (私は「内張り剥し」の曲がった裏で押さえつけました) |
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B:300×400のアルミ制振材をサービスホールから入れ、サイドインパクトビームの下側から貼り付けます。 C:200×400のアルミ制振材をサービスホールから入れ、サイドインパクトビームの上側に貼り付けます。 次にCの上部に250×400のアルミ制振材を貼りますが、ドアノブが有るので、その形状に合わせてカットしながら貼ります。 |
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ウレタンの吸音材をサービスホールから入れ、特にスピーカの裏側を中心に、サイドインパクトビームを覆うように貼り付けます。 多く貼るとデッドニング効果が薄れるので、初めは少なめに貼り、音を聞きながら好みで追加するのが良いでしょう。 |
サイドインパクトビームを覆ったウレタン材は、下がってきたガラスと干渉しません。 しかし、アルミのデッドニング材も同様にサイドインパクトビームを覆って貼った場合、その上にウレタン材を貼ると干渉します。 最近流行のカーボンハットを付ける場合、ウレタン材の上にカーボンハットを貼るとガラスと干渉するので、この場合はウレタン材でサイドインパクトビームを覆わないでください。 (ウレタン材は、サイドインパクトビームの上下で分けます) |
内張りを止める金具やドアフック等も外します。 また、内張りを止めるクリップ穴の位置を明確にするため、反対側のドアを開け、内張りを剥しておくと確認し易いでしょう。 |
D:400×350のアルミ制振材をスピーカ周りに貼ります。 スピーカ穴を開ける際、穴の中心部から円周に向かって切り込みを入れ、アルミ材をインナーパネルの裏側にも貼り付けます。 |
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カーボンハットを付ける場合の参考例です。 カーボンハットはスピーカ穴の裏側、サイドインパクトビームを覆うように付けます。 (ウレタン材でサイドインパクトビームを覆わないでください) |
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E:250×300のアルミ制振材をスピーカ上部のサービスホール部分に貼ります。 ここは多くのハーネスやクリップがあるので丁寧にやりましょう。 |
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F:270×400の新アルミ制振材をサービスホール部分に貼りますが、サービスホールの穴に合うようにウレタンの吸音材を貼っておきます。 これは、新アルミ制振材が薄い為、そのままでは音圧に負けてしまうので、圧力を吸収する目的で貼ります。 (アルミ板裏面にブチルが無い点に注目!) |
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G:250×400の新アルミ制振材をサービスホール部分に貼りますが、サービスホールの穴に合うようにウレタンの吸音材を貼っておきます。 これで全てのサービスホールを塞ぐことができましたが、スピーカを取り付けてテストすると、新アルミ制振材のサービスホール部分が音で振動するのが分かります。 |
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振動防止に、H:270×400、I:250×450 の樹脂材を貼って振動を押さえます。 ここは樹脂材でなく普通のアルミ材を貼っても良いですが、新アルミ材の寸法より大きくしないのが、剥す時のコツです。 最後に、J:130×400のアルミ材をドア下部に貼りますが、ここには小さな穴があるので、音圧調整に使っても良いでしょう。 |
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穴を開ける場合、カッターの刃で切ろうとせず、カッターの刃先をアルミ板に「押し込む」ようにすると、思わぬ怪我も無く良いでしょう。 |
ドアの開閉ロッドは保護パイプに入っているので、通常のデッドニングで使うコルゲートチューブは不要です。 デッドニング材をそのまま貼り付けられますが、下記のように細工すると音漏れが無く、ビビリ発生がありません。 ![]() ![]() ![]() 【左】アルミ板にワイヤーが通るように切れこみを入れ、【右】ワイヤーの下に吸音材を貼ります。 【中央】その上からもう一枚のアルミ板で塞ぎます。 |
スピーカ取り付けに「エスハイ専用」バッフル板(厚さ:12mm)を使った例です。 (市販のバッフル板では厚すぎる為、内張りが止まらないという報告があります) ![]() ![]() ![]() 【左】スピーカ穴の下側がカットされているので雨水の影響が出ます。 【右】アルミ材を貼り、ブチルを盛り上げます。 【中央】その上からもう一枚のアルミ板で塞ぎ、雨水がアルミ板の裏側に沿って落ちるようにします。 |
デッドニングした結果、サウンドシャキットを大音量で使っても、低音の割れ、ボンついた感じが無くしません。
その結果、低音から高音まで、伸びのあるスッキリした音質になっています。 オフ会で試聴希望の方が多くいて、皆さん「音割れしないし疲れない音ですね!」と好評です。 相乗効果として、ドアのサービスホールを塞ぎ、ドア内部で増幅する騒音が減ったことで室内が静かになったことに加え、ドアが重くなり、その開閉音に高級感も出ています。 今回、サービスホール部分に「剥せるデッドニング材」を使ったことで、ドア内部のメンテナンスの自由度が上がったことは嬉しいことです。 しかも、再度取り付ける場合は、デッドニング材の裏側に薄い両面粘着テープを貼ることで止められるので、再利用可能なデッドニング材です。 正にエスハイにぴったりな「エコ向き」材料と言えるでしょう。 |
![]() 上記はサウンドサイエンス社で販売している「オーディオアナライザ」を使い、左右のスピーカが運転席でどう聞こえるか、その周波数特性を調べたものです。 (両方ともスピーカはウインダム純正に換え、サウンドシャキット「オン」、コントローラは中位置に設定しています) デッドニング後の ■赤いラインは、デッドニングした事で低音域が上がった部分です。 ■緑のラインは、左右のスピーカの共鳴で打ち消しあっている部分と思われます。 ■青のラインは、車内空間の影響や何処かで発生しているビビリの影響と思われます。 周波数特製を全体で捉えた場合、低音域が持ち上がった割に200Hz〜3000Hzが低いので中音域との「つながり」が悪く、MIMの音質調整で中音域を上げる必要があるでしょう。 これらはサービスホールを一部開けることで部分的に改善すると思いますが、400Hz付近の落ち込み対策は、試行錯誤などでかなりの時間が必要と思います。 |